2012年11月23日金曜日

北京バレエ鑑賞旅行記(3)〜ギエム・ムッル「Marguerite and Armand」〜

11月16日(金) 「エチュード」「マルグリットとアルマン」初日


★チケット予約の仕組み★

中国国内での公演は、実はチケットを取るのが大変である。
苦労の末Stellaの手元に届いたチケット。

①語学的なハードルが高い。

サイトはEnglishっていうのを押しても基本英語が出てこない。つまりは外人に対して販売する気がない。中国語ができない人は翻訳ソフトで自力で解読しましょう。固有名詞(ダンサーとか演出家とか作曲家とかの名前など)は翻訳しても出ないから、写真が出なければ自力で推測しましょう。(Stellaも马西莫·慕鲁=マッシモ・ムッルとか、気合いで解読しました)

②出演者や演目含め、情報が遅い。

チケット発売の時期も明確にされているわけではないのでいつ発売になるのかわからない。一般的に言って2カ月前。
結論から言うとこまめにホームページをチェックするしかない。
最初はただただ、世界的スターのシルヴィ・ギエムが来るとの情報しかなかった。Stellaはマッシモ本人から聞いてたから情報無くても来ると信じてたけど、それでもやっぱり「リアレイ」の方は実はニコラとだって分かったのはだいぶ後だったから、休み取るのがかなり厳しいタイミング、分かっていたらマッシモだけに絞って最短に出来たのに…と思わなくもない(実は11/16金曜日だけ休めば済む話だったというのは結果論)。

Stellaの友達の友達の友達が国家大劇院に勤めているというから、いつから発売くらいは知ってるかと思いきややはり知らなかったし、東京バレエの北京行きがキャンセルになった(http://i-diari-di-stella.blogspot.jp/2012/09/blog-post_26.html)時も、その子は結局シルヴィの公演自体がキャンセルになるのか、違う演目でやるのかさえ知らなかった。つまりすべてにおいて情報が遅いのである。

③現実的には北京現地にいないとチケット受け取りができない

オンライン予約は可能だが、オンライン決済ができない。予約後1日以内とかに劇場窓口で代金を払いピックアップするという仕組み。外国に送ってくれるシステムも送金や振込もできないため、海外にいてチケットを買うのは不可能ということになる。

④中国への送金が難しい

それでも果敢にチケット入手を試みたStella。友達の友達を通して買ってもらおうとしたが、いざその子の銀行口座にお金を送金しようとみずほ銀行に問い合わせたところ、「現在政府間の問題の影響で送金がしづらい状況となっております。送金がどうしても必要な場合は、パスポートなどの身分証明書、送金目的の証拠になるようなもの(メールなど)云々を添えて提出していただくことになります」と。
むむぅ・・・ここにも尖閣問題!天に向かって毒を吐いてみても、何時ものように祈ってみても、流石にこればかりは…

というわけで、色々面倒なのである。
つまるところ自分では前もって予約するのは無理。面倒なこと(予約、立て替え、取りに行く等)を頼める間柄の知り合いがいなくては不可能ということになる。
Stellaは幸い北京駐在している友人に頼んでみたら快く引き受けてくれ、その友人の中国人アシスタントが劇場窓口まで行ってピックアップしてくれた。感謝感激雨あられ~~~


★国家大劇院★


噂には聞いていたけど、イマハチだった、中国の観衆&劇場。

国家大劇院はデザイン自体は斬新ですばらしく、圧巻。なんだけど、舞台装置に不備?があってカーテンがうまく閉まらない事が初日に1度あったし、ときどき照明さんがうまく主役にライト当たってないかも的な瞬間も。

実際劇場に来ている人達はというと、こういう言い方失礼だけど、特別文化的でもなければブルジョワ的でもない。
VIP席(日本でいうS席)は680元(約9000円)。中国人の平均的収入を考えたら、べらぼうに高いはず。2元で地下鉄に乗れてしまう街で、ミネラルウォーター500mlが1~2元で買えちゃう街で、680元だゼェ??感覚的には1元=80円くらいかと推測するに、680元は5万円は超えるイメージ。
てっきり成金風の金持ちが来ているものとばかり思いきや、客層を見るとまず、①若い人が多い②フツーの人たちが多い(スウェットみたいのとかシャカシャカのウィンドブレーカーみたいのとか履いてる決して洗練されてない人たち)③あんたたち、バレエに本当に興味あるの???っていう人たちが多すぎ。

あのさー。別にお金が余ってて暇つぶしに来てるのかもしれないけど、わざわざ海外からトップレベルの人たち呼んだらそれなりに敬意払おうよ。
話してる人が多すぎてうるさいし、携帯は鳴るし、隣の男はLINE使ってて画面まぶしいし。思わず注意したら不服そうで、帰るまで終止こちらを見ていた。ふんッ。
他にもあちらこちらで、フラッシュたいて写真撮るわ、携帯で動画撮るわ(飲食物とカメラは劇場内に持ち込めないからスマホでね)もう呆れるは腹立つわ。




★最悪の「エチュード」★


こんなヒドイの観たこと無い。と思った。
おいおい。
東京バレエの「エチュード」はもっとうまかったぞ。
北京舞踏学院附属中等舞踏学校の皆様。いくらジュニアでも人から金取るならもっと頑張りましょう。
ワン・チーミンだけが救いだったけど、彼女も不調。


いくらマッシモ目当てで来たといっても、680元も払ってるからなぁ~~~。はるばる北京くんだりまで旅費かけて来てるからなぁ~~~

溜息。


★マッシモとシルヴィの「マルグリットとアルマン」★

ドキドキの開幕。

冒頭の病床にあるマルグリットの部屋の背景には、5月にミラノで見たバージョン(個人的にイマイチと思った)とはまた違うマッシモの特大写真が映っている。
あゝもうっ!毎回じれったいけど、このセットだと白いシースルーのドレープカーテンが邪魔して、マッシモの麗しい姿がよく見えないっ‼

全身白の衣装に身を包み、マッシモ登場。
調子、いいかも!
俄然嬉しくなるStella。


去年のHope Japan以来久々のシルヴィ姐さんも、マルグリットの赤いドレスに身を包み、艶やかな笑顔で元気そうである。


彼女を取り巻くグルジア国立バレエの男性ダンサーの皆様も、お久しぶりです。6月のニーナ・アナニアシヴィリ来日公演以来ですわね。皆さん相変わらず濃ゆいですね…

ダンディーなアンソニー・ダウエル様も健在!彼の演技力で、俄然作品全体に深みが増す。


あゝ、やっぱり素晴らしい。シルヴィ様!

そしてマッシモ。
完璧主義のシルヴィと踊るときは、プレッシャーも相当だろうから、緊張して硬くなってないといいけど…とStellaの勝手な心配をよそに、なんとまあ!ものすごい安定感。安心して見ていられた。
全身の力がうまく抜けて、演技に没頭している。相変わらず愛情表現は細やかで情熱的(内向的だけどやはりイタリア人ねとこういう時思う)、「黒」のシーンの怒りと苦悩は、息を呑むほど。
いつかのダンスマガジンのインタビューで、「シルヴィの目の中を覗き込むだけでいい」なんて発言もありましたが、本当なんだなあと納得した。この2人は信頼し合っているのねと感じられる舞台でした。

ピアノ伴奏はスカラでも弾いてたダビデ氏。さすがは女王シルヴィ様、初の中国公演は豪華ベストメンバーで臨むっつー心意気が充分伝わります。


★出待ち文化のない国・中国★

さて、知り合いもいず、コトバも通じない北京の劇場でいったいどうやって楽屋口を探そうか?これはStellaが出発前から懸念していた問題である。とはいっても当日劇場で英語話せる人つかまえて聞くしかない。
しかーし!英語話せる人率1%以下の街・北京。国家大劇院と言えども英語をマトモに話せる輩はゼロに等しい。思った以上に難関である。

かろうじてクロークのとこにいる青年がカタコトの英語を話せるもよう。そこで「どこでダンサーを待っていたらいいの?サインが欲しいんだけど」と聞いても、いっこうに解せない様子。まさか、そういう習慣ないの???

そういえば、プレゼントやお花を預けるところも見当たらない。あとでわかったことだが、セキュリティー上の問題で、プレゼントなどを楽屋に届けることはできず、手紙も中身をチェックされるので封ができないそうである。どんだけ・・・



★バレエおたくのアメリカ人母娘★

ちっくしょー。いったいどこなんだ、楽屋口。

国家大劇院の外をぐるっとまわったら見つかるかな?(周りは池で囲まれているからそれもなさそう)

そう思いつつうろうろしていたら、西洋人の女性ふたりがぽつんと劇場周辺にまだ残っていた。きっとお仲間だ!と思って話しかけたらやっぱりそう。

スタッフ出入り口ふうのドアの脇に警備員が立っていて、彼女たちはそこからダンサーが出てくると踏んで待っているのだとか。しかし何の確証もなく、Stellaと同じであちこち訪ねてみたけど皆「わからない」という。あるいは知っていても言ってはいけない決まりなのか、それとも本当に楽屋口という存在自体がないのか。答えがわからないまま待ち続ける。

少なくともStellaひとりぼっちで待たなくて済んだし、この母娘、シルヴィの大ファンで、彼女の行くところには飛んで出かけていくらしい。東京にもミラノにもNYにも行ったとかで、その時の話を聞かせてもらって楽しめた。彼女たちは他のバレエ団にも詳しくて、待つ間バレエ談義に花が咲く🌸


★ついに手がかり・・・!!★

60代のこのお母さん、何気にめっちゃチャレンジャーである。

通りがかる人に手当たり次第、あなた英語話せる?楽屋口はどこか知ってる?と尋ねること何人目かに、やっと中国人の若い女性で英語を話せるスタッフを捕まえることができた。なんでも、この国家大劇院が発行するマガジンの編集にたずさわっているらしい。見るからに出来そうな女の子で、しかも超がつくくらい親切。

曰く、楽屋口というのはなく、アーティスト専用の出入り口が地下にあって、ファンとは接触できないらしい。
がーーーーん。

しかしアメリカ人母娘は諦めなかった。「私たち17時間もかけて飛んできたの」「なんとかひと目シルヴィに会えないかしら」ほらっ証拠、とばかりに彼女たちがシルヴィと世界のあちこちで撮った写真を彼女に見せる。

私たちを哀れに思ったのか、「わかった。会える保証はできないけれど、サインが欲しければ私がもらってきてあげる」と掛け合ってくれた。なんて頼もしい!!しかし欲を言えば、私たちはサインはむしろもう要らないから、ひとめ会いたいのよ、一緒に写真を撮りたいのよ~。



「ちょっと見てくるから待ってて」と言って去った彼女の背中に3人のすがるような視線。しかし、しばらくして戻ってきた彼女の口からは残念なニュースが。
「もうシルヴィは帰ってしまったみたい。でも明日も来るならそれまでに何が可能か劇場の責任者に確認しておいてあげる」彼女は約束し、私たちとメールアドレスを交換。
なんて親切なのっ!!


もしかしたら、明日マッシモに会えるかもしれない。

ようやく見出したかすかな希望✨を胸にホテルへ帰ったStellaであった。

to be continued...

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