2011年11月27日日曜日

Contrappunti Massimo Murru (I)

Contrappunti Massimo Murru e Roland Petit ~ parte 1 

2010年の春ごろに、イタリアのTV局Skyの番組Classicaで、スカラ座のエトワールMassimo Murruが、振付師Roland Petitについて語るドキュメンタリーが放送されました。
またこの番組は、2011年6月に再放送されたようです。(奇しくもプティが7月に他界する直前)

インタビュワーの質問にマッシモが答えながら、プティ作品を踊るマッシモの映像が多数挿入されています。

その主な内容について、数回にわたり記録します。
こちら、パート1動画へのリンクです。
Contrappunti parte 1


"La musica e la danza sono inscindibili.." 
音楽とダンスの切っても切れない関係


インタビューの冒頭部分は、音楽についての議論が続きますが、簡単にまとめさせていただきます。

音楽はarchitettura liquida (liquid architect)であるという定義についてどう思うか?というトピックで議論が始まりますが、マッシモはその定義は正しいとし、ダンスと音楽は切っても切れない関係にある、と述べています。

ローラン・プティの何がここまで彼を個性的にしていると思うか?という質問に対しては、「クリエーターとしての天賦の才能の持ち主であること以外に、彼が作り出す作品(振付)の特徴は、今日他に例を見ない、Coreografi narratoriであること」だとしています。
すなわち彼の振付けは、物語を語る力がある、とマッシモは評しているのです。




続いてパート1ではプティ振付の「ボレロ」を中心にインタビューが進行します。

Prove di Boléro a Marsiglia  
マルセイユでの「ボレロ」 (1997)


1997年、マッシモ・ムッルはLucia Lacarra ルシア・ラカッラと共にRoland Petit によるRavelの「ボレロ」をマルセイユの屋外ステージで踊っている。
まずはその屋外ステージでのリハのシーンが挿入される。
パートナーのLucia Lacarra (マドリード出身) の美しさはリハであっても目が釘付けになります。

マルセイユでの「ボレロ」本番をフルで観たい方はこちらのリンクをどうぞ。全長17分強です。
Bolero Lacarra-Murru 1/2
Bolero Lacarra-Murru 2/2




リハーサルの中で、プティはふたりに向かって、「君たちはエレガント過ぎる。互いにたいする戦闘的な感じが足りない」
と指導しています。
プティは動物、いや獣のような、ぶつかり合う二人の野性的な力を表現したかったのでしょう。


番外編: ボレロ、カルメンの練習風景

インタビューContrappuntiとは少し離れますが、こちらは中国の誰かがネットに上げてくれた、カルメンとボレロの練習風景。
"Il talento semplicemente"と題されたドキュメンタリーのようです。

フランス語で進む会話に、イタリア語字幕がついています。
(といっても一方的にプティが指導してマッシモは黙って聞いているだけですが・・・。マッシモは他の映像を見ても、普通にプティの仏語による指導を完璧に理解しているっぽいのですが、自分が仏語を発しているのを聞いたことがありません。。。。)

2パートに分かれる割と長い練習シーンです。冒頭にCMが入ってしまう仕組みのようですがご容赦を。
パート1: Massimo Murru Carmen/Bolero Lesson 1
パート2 :Massimo Murru Carmen/Bolero Lesson 2

パート1冒頭で、プティが「マァーーーッ!」と叫んだ後に、"Massimo, je te tue!" マッシモ、君を殺すよ!
と言っているのがなんかウケますが、真剣そのものの綿密な指導が延々と続きます。


このパート2の冒頭で、マッシモが語っています。キャップをかぶって、まだとても若いマッシモ。
今と声質も少し違います(!)。当たり前か。。。1997年といえば、14年前。マッシモは当時26歳(!)です。

ここでもやはり、マッシモに対し、プティは「もっと力強く、もっとマッチョに!」と厳しい指導をしています。途中マッシモの肩をドン、と押して突き飛ばすところが印象的です。

厳しい練習を重ねてのこの美しい結果なのですね。




Roland Petitによる「ボレロ」

Maurice Ravel作曲の「ボレロ」はベジャールによる振り付けのほうが有名ですが、このプティの振り付けも私は個人的に好きです。
踊っている二人(マッシモとラカッラ)が美しいからというのも手伝ってますが・・・

ベジャール版も本当に素晴らしいと思いますが、同じ音楽でも振付が違うとここまで別の世界を見せてくれるんだなーと感心します。
別のインタビューでマッシモは、ベジャール版に関してややネガティブな見解を示していましたが、プティと自分とで作り上げた作品への愛着や入れ込み方と、他の振付師によるボレロとは、比べものにならないでしょうね。



このプティ版「ボレロ」、作品の始まり方がまた面白い。

リングに上がる2人のボクサーのように、MM、LLのイニシャル入りのローブをまとったマッシモとラカッラの姿がステージに現れ、ゴングが鳴る。
ゆっくりとローブを脱ぐマッシモに、観客から野次が飛ぶ。(さすがマルセイユ)
Bolero in Marseille, 1997.

衣装も脚がむき出しの、レスリング選手を思わせるレオタード。
初めて見た時ちょっとプッと笑ってっしまいましたが(マッシモ、ごめん)、これはやはり、二人のぶつかり合い、「闘い」が根底のテーマとしてあるから選ばれた衣装なのでしょう。

 

ベジャールのボレロに比べるとやや地味な感じはありますが、よくよく見ると、難しいリフトや振りが盛りだくさんで、これを完璧に踊るマッシモとラカッラには本当に拍手したいです。


ラカッラの体の柔軟さと、脚の長さ(マッシモとほぼ一緒)にも注目したいところ。
日本に来てくれないかしら・・・


そして、フィニッシュのポーズ。


うーん。美しい。
若く美しい二人のダンサーに拍手。


楽しんでいただけたでしょうか? だといいなっ。


........to be continued❤



About Massimo Murru (V)

Massimo Murru in scupture and in painting

遂に、彫刻そして油絵になったマッシモ。

ドイツ人芸術家Wolfgang Alexander Kossuthにより、その肉体の優美さと繊細さはこうして永遠に。

La sua grazia e sensibilità ci si conservano per bene, grazie a Wolfgang Alexender Kossuth.
http://www.kossuth.org/gallery/updating2008/ballet/index.html

2010年1月に亡くなられたWolfgang Alexander Kossuth氏の美しい作品。
マッシモをこうして永遠に残してくれて、ありがとう。

Vielen Dank!

Massimo Murru, plaster, 1994



Massimo Murru, oil on cloth, 2007

Massimo Murru, oil on cloth, 2007

thank you. 

2011年11月24日木曜日

About Massimo Murru (IV)


Una giornata con Massimo Murru
     ~Massimo Murru documentary~ parte 5

Una giornata con Massimo Murru (One day with Massimo Murru)と題し2010年に放映された、マッシモの独白によるドキュメンタリーの内容を3回にわたり書いていきます。

本編はそのラストです。
Part 4後半とPart 5についてまとめます。
10分弱のPart 4のリンクはこちらです:Massimo Murru Documentary 4
8分強のPart 5のリンクはこちらです:Massimo Murru Documentary 5


Le chant du compagnon errant (独 Leider eines fahrenden Gesellen)  さすらう若者の歌

この「さすらう若者の歌」は、私の好きな作品の一つ。
初めて見たときは、男性二人によるセンシュアルなパドゥドゥーに、どうしていいのやらわからないような感じを覚えましたが、とても美しい振付だと思います。

マッシモの演じる名作のひとつだと思うのですが、このドキュメンタリーでも、この演目にはもっとも長い時間が割かれています。


第一曲「恋人の婚礼の時」は、男が恋人を失った悲しみを他人に語るシーンで。
マッシモの美しくていねいな踊りがしばし流れる。マッシモの相手のダンサーはGabrielle Corradoと思われる。


バックに流れているのはドイツ語の歌詞です。


Chant du compagnon errant, with Roberto Bolle

Wenn mein Schatz Hochzeit macht,
Fröhliche Hochzeit macht,
Hab' ich meinen traurigen Tag!
Geh' ich in mein Kämmerlein,
Dunkles Kämmerlein,
Weine, wein' um meinen Schatz,
Um meinen lieben Schatz!

Blümlein blau! Blümlein blau!
Verdorre nicht! Verdorre nicht!
Vöglein süß! Vöglein süß!
Du singst auf grüner Heide.
Ach, wie ist die Welt so schön!
Ziküth! Ziküth!

Singet nicht! Blühet nicht!
Lenz ist ja vorbei!
Alles Singen ist nun aus!
Des Abends, wenn ich schlafen geh',
Denk'ich an mein Leide!
An mein Leide!
愛しい人が婚礼をあげるとき、
幸せな婚礼をあげるとき、
私は喪に服す!

私は自分の小部屋、
暗い小部屋に行き、
泣きに泣く、愛しい人を想って、恋しく愛しい人を想って!

青い小花よ! 青い小花よ!
しぼむな! しぼむな!
甘い小鳥よ! 甘い小鳥よ!

君は緑なす野原の上で、こうさえずる。
「ああ、この世はなんて美しいの!
ツィキュート! ツィキュート!」


歌うな! 咲くな!
春はもう過ぎたんだ!
歌はすべて終わった。
夜、私が眠りに入るときも、
私は苦しみを思うだろう!
苦しみを!

Part 5 ~ Daniel Harding, マッシモについて語る

イギリス人の指揮者、ダニエル・ハーディングは2009年12月スカラのSerata Bejartで指揮をしている。

I also find, watching him, that he's very distracting when I'm trying to work because I can't look away
「仕事をしているときマッシモから目が離せないから困る
と冒頭で述べている。

そのあと「思わず本音が出ちゃった」的なはにかみ笑いをしてaahmn..って続けられても・・・
ちょっとやめてよっ あんたゲイでしょっ?!と思わずにいられません。。。


ハーディングの語りは続く。

マッシモは良いダンサーは同時に良い俳優であることを理解している。
僕にとって、バレエの動作を見て美しいと思うだけでは不十分であり、バレエのランゲージ、彼らが何を語ろうとしているのかを理解したいと思うし、そこが面白いと感じている。

マッシモが踊るの見ていると、彼は非常に表現力豊かで、体だけではなく、顔の表情でもたくさんのことを表現している。

ダンスを知る人がマッシモ・ムッルを語れば、僕が知らないことを語るかもしれないが、僕はマッシモのその点が直観的に引きつけるものを持っていると思う。顔の表情による表現は最も理解しやすいものであり、人間にとって顔は、感情表現をするのに最も重要なものであるからだ。

他のダンサーと比べても、マッシモは彼の持つありとあらゆるものを使って表現しており、非常に素晴らしいと思う。





最後に夜の闇の中ひとりタバコを吸いながら建物の揺れる明かりを見つめる哀しげなマッシモ。
タバコ吸うんですね。意外です。


あまりにストイックなそのキャラからは考えにくいですが、Sylvie Guillemのサイトから東京を背景にしたこんな写真を見つけてしまったので、たぶん少しは吸うんだろうなと。 
あのシルヴィさえも吸うのなら、それもありなのかなと思ってしまった。

しかし、二人とも立ち姿がかっこよくキマってますね~。


~ The End❤ ~

2011年11月23日水曜日

About Massimo Murru (III)


「さすらう若者の歌」初演カーテンコール
 Una giornata con Massimo Murru
 ~Massimo Murru documentary~ parte 3 & 4

Una giornata con Massimo Murru (One day with Massimo Murru)と題し2010年に放映された、マッシモの独白によるドキュメンタリーの内容を3回にわたって書いていきます。本編はその第2弾。
残念ながらパート2は今日時点でYouTube上になく、見ることができません。
ですので今回はパート3と4の前半についてまとめます。

8分強のPart 3のリンクはこちら:Massimo Murru Documentary 3
10分弱のPart 4のリンクはこちら:Massimo Murru Documentary 4

 
Mestiere d'imaginazione 役作り

Part 3 はマッシモがヘアメイクをするシーンから始まります。
バレエダンサーは皆自分でメイクをするのですね、男性でも。

Roland Petitはマッシモに、舞台の練習にあたり一番初めにしなければならないことの一つが "mestiere d'imaginazione" だと教えた。

"mestiere"は、英語で言うところのcraft, profession。つまりは、イマジネーションのプロであれ、想像を極めろということ。
役柄の人生を想像することが役柄になりきり、感動を与えられるバレエを踊るために、とても重要なのである。


ここで最たる例として、マッシモは「ロミオとジュリエット」について語る。

当然のことながら、ロミオのような人生は誰の経験にも似ていないから、その人生を想像してなりきってみる。
「いわば嘘ではあるけれど、まったくの嘘というわけでもない」とマッシモは言う。


 
Romeo e Giulietta ロミオとジュリエット
Romeo and Juliet, with Sylvie Guillem

2008年3月のEmanuela Montanariとのバルコニーのシーンが流れる。

そして生前のRoland Petitとまだ若いマッシモや、カルラ・フラッチなどの美しい白黒写真が数枚紹介されます。

マッシモ曰く、「プティは自分が初めて出会った振付師。
出会ったころはまだとても若く、もし運命と言うものがあるのであればそれは運命だったし、それからのキャリアの間ずっとその運命は自分と一緒についてきた」

その間、ある意味プティはマッシモの成長を見守ってきたと言える。






プティとの出会い、そしてプティとの絡みによってマッシモはイタリア国外にも名を馳せるようになり、パリ・オペラ座やロンドン・コヴェントガーデンに招かれ、インターナショナルなバレエダンサーとなった。

Chéri rehearsal - Roland Petit, Carla Fracci, Massimo Murru

非常に高名なプティが若かりしマッシモに目を留め、数々の有名なプリマドンナとの共演を可能にし、いくつもの作品をマッシモのために・マッシモの意見を取り入れながら「共に」作りあげてきた。

そのためあらゆるインタビューで、マッシモはプティについて尋ねられることが多いしまた自らプティについて語るのは当然であるが、マッシモにとってプティは初めて出会った振付師であり、マッシモを成長させてくれた恩師であり、死してなおマッシモを各国の舞台に立たせてくれる、まさに守護神のような存在だと思う。


L'Arelesienne アルルの女

L'Arlesienne アルルの女
プティの言う 「mestiere」をやる意義を証明するものとしてマッシモは「アルルの女」を引き合いに出している。
なぜなら自分はある人物へと変わり、舞台で物語を語るのだから。
舞台の上では別の人間になれるという可能性を、マッシモは身をもって経験しているのである。

「アルルの女」のあらすじ:
南フランス豪農の息子フレデリは、アルルの闘牛場で見かけた女性に心を奪われてしまった。フレデリにはヴィヴェットという許嫁がいるが、彼女の献身的な愛もフレデリを正気に戻すことはできない。日に日に衰えていく息子を見て、フレデリの母はアルルの女との結婚を許そうとする。それを伝え聞いたヴィヴェットがフレデリの幸せのためならと、身を退くことをフレデリの母に伝える。ヴィヴェットの真心を知ったフレデリは、アルルの女を忘れてヴィヴェットと結婚することを決意する。2人の結婚式の夜、牧童頭のミティフィオが現れて、今夜アルルの女と駆け落ちすることを伝える。物陰からそれを聞いたフレデリは嫉妬に狂い、祝いの踊りファランドールがにぎやかに踊られる中、機織り小屋の階上から身をおどらせて自ら命を絶つ。
―Wikipediaより


最後の、気がふれて身を投げるシーンがここで流れます。 (2008年9月)
マッシモは先日(2011年10月)のシルヴィギエム・オンステージのガラでもこのシーンを踊っています。




La Dame aux Camélilas   椿姫 
Marguerite and Armand, with Sylvie Guillem

次にマッシモが語るのは、ノイマイヤーの「椿姫」のアルマン役。

この役を演じることは彼にとってある意味「発見」(una scoperta) だった。

ここでマッシモは昔、学校でバレエのビデオを観たことを回想している。
そして椿姫を観て「いつかこれを踊れたらどんなに素晴らしいだろう」と思ったが、いざその日が来るとひどく怖くなったという。



他のインタビューでもすぐに気づくことだが、マッシモはこのpaura(恐れ)という言葉を多用する。これは、個人的に非常に興味深い現象だと感じた。

完璧主義から来る恐れ、過去の偉大なダンサー達と同じ役を踊るプレッシャー、有名なバレリーナの相手役を勤める重責・・・
いろいろあるのだろうが、それらのチャレンジをエキサイティングなものとして興奮する、または自分を叱咤激励するというよりは、恐れを感じてしまう性格らしい。

そしてその気持ちをカメラやインタビュアーの前で吐露するバカ正直さ。。。(苦笑)
個人的にはそういうところが好感を持てますが、一般的には自信のないプロ?に見えてしまわないか、ちょっと心配になってしまう。


  ...to be continued.

About Massimo Murru (II)

Una giornata con Massimo Murru
        ~Massimo Murru documentary~ parte 1

Una giornata con Massimo Murru (One day with Massimo Murru)と題しイタリアのSky局で2010年に放映された、バレエダンサー マッシモ・ムッルの独白によるドキュメンタリーの内容を3回にわたり書いていきます。

8分強のPart 1のリンクはこちらです:Massimo Murru Documentary 1

L'incontro con la danza
ダンスとの出会い


マッシモは様々なインタビューにおいて、ダンスとの出会いは全くの偶然であったと語っている。
"Devo ringraziare mio papa"
と、バレエを始めるきっかけをくれた父に感謝の意を表している。



10歳のころ、父に手を引かれてスカラ座のバレエ学校のセレクションを受けに行った時は、特に何かを意識したり真剣にダンスに取り組もうという気はなく、サッカーと同じように余暇の時間に行うものとして捉えていたという。
(イタリアなので誰もがサッカーをやるのだろうが、サッカーはあまり好きになれなかったらしい) 


バレエはそれまで一度も見たことがなく、家族も特に劇場好きで劇場に通っていたわけでもなければ、ダンスとは何か、これから何が起こりどんなことに出会うのか、想像もつかなかったそうだ。



"Mediteranea"練習風景
 マッシモの父は、小さくか細いマッシモの体を強くする為にダンスがいいかもしれないと考えていたようではあるが、マッシモをバレエ学校に行かせようというのが父の意志だったのか母のものだったのか、実際の理由は何だったのか、未だに分からないとマッシモ本人は語っている。  

ただ父親は、マッシモが音楽に対する情熱を抱いていたことは知っていたという。
マッシモの言葉を借りれば、「音楽を聞いていると、自分の世界に入り込み、世界から自分を切り離し、自分が消えることができた」。


10歳にしてクラシック音楽をそこまで好きというのはやはりアーティストとしての素養があったのだろう。







"L'inizio non fu facile..." 
ダンス学校での最初のひと月

最初のころはバレエ学校での時間はあまり容易ではなかったらしい。

マッシモの家族は非常に仲が良く、(彼も独白の中で"una famiglia molto affettuosa" と表現している) 両親と妹、祖父母と同居しており、学校への送り迎えをしてくれたり、バカンスに一緒に出かけたりと、ややべったり?な印象。

本人も自らを"un bambino normale, molto coccolato dalla famiglia" と、幼いころ家族にとても可愛がられていたと認識している。


確かによく考えてみると、いくらマザコンが当たり前のイタリアでも、10歳にもなって父親に「手を引かれて」バレエ学校へ、ってちょっと甘えん坊だな、という感はありますね。(^^;)




Teatro alla Scala, Milano スカラ座

スカラのダンススクールの規律や先生たちはひどく厳格で、
"la danza è anche una scuola di vita"
「ダンスは人生の学校でもある」
とされ、バレエだけでなく態度全般に関しても厳しく指導を受けたようだ。

その厳しさをマッシモはミリタリースクール"una scuola militare" と表現しているものの、自分にとってスカラの様々な規律(宿題をすることや、時間厳守、秩序を保つこと、バレエシューズや練習着を常に清潔に保つこと、髪をきちんと整えて練習にのぞむことなど)は、ごく当たり前のことであったとしている。




ここでドキュメンタリーは犬の散歩をする様子や、カフェでコーヒーを飲みつつ新聞を読む日常のシーンが映し出される。

 学校に通い始めて1ヶ月経った頃、ごく簡単な振付けを踊ることになった。この日、マッシモ曰く「もしかすると先生もこの日のことを覚えているかもしれない」というくらい決定的瞬間が訪れたようだ。
皆でそれまでに習ったプリエやごくごく基本的なステップを使った簡単な振付を踊ることになった。

伴奏者がピアノを弾き始め、美しいピアノの音色を聞きながら踊り始めた。自分が何をしているのか何も分かってはいなかったが、それは音楽の魔法だった、と彼は言う。マッシモにとって音楽は最も美しく、興奮させるものだった。
音楽にのって踊りながら自分が自由になれた気がし、自分の居場所が見つかった気がしたという。


そしてバレエがひょっとして自分を自由にしてくれる、自分にとって心地のいいものになるかもしれない
"ho sentito che probabilmente quella poteva essere un modo per stare bene, per sentirsi liberi"
と感じたのだった。

  ...to be continued.

2011年11月21日月曜日

About Massimo Murru (I)

Massimo Murruとの出会い

最初にお断り&謝っておきますが、これは誰のために書いてるわけでもなく、自分のために書きます。

ある人のことが他のソースから消えてしまっても、記録を残しておくためです。




初めて彼の踊りを見た瞬間、Massimo Murruにはとにかく、一撃で深~~~くやられました。
生で見ずしてもあと半年~1年は続きそうなくらいの強烈な印象です。
本人の奥ゆかしくシャイな性格とは裏腹に。



Massimo Murru はイタリア人バレエダンサーです。

1971年ミラノ生まれ。
184cm 70kg。バレエダンサーとしては重宝される、わりと長身のダンサーで、顔がとても小さく手足が長く華奢なプロポーションのため、実際よりも長身に見えます。

ミラノスカラ座のエトワールです。






【略歴】
1990年スカラ座入団、94年に l'histoire de manon の主役 des Grieux を演じ、プリンシパルダンサーに昇進。

振付師Roland Petit ローラン・プティ (没2011年)に気に入られて彼の作品の多く(カルメン、こうもり、ノートルダムドパリ等)に出演し、イタリア人のゲスト・エトワールとして初めてパリ・オペラ座で踊ることになる。
PetitはまたMassimoのための振付もいくつか生み出している。往年のスターであるCarla FracciとのChéri シェリやラヴェルのBoléroボレロがそうである。

また同じく著名な振付師Mats Ek マッツ・エック も「ジゼル」のアルブレヒト役にMassimoを抜擢、さらに「カルメン」でSylvie Guillemの相手Don José 役に選ばれ、イギリスのコベントガーデンでのデビューも果たしている。

2003年よりスカラ座のエトワールとなる。
日本でも世界バレエフェスティバルや、Alessandra Ferri, Sylvie Guillemのパートナーとして来日しており、草刈民代さんの引退公演にも出演するなど、人気のダンサーの一人である。



「白鳥の湖」 草刈民代さんと。

本当に美しいダンサーの肉体ですね。筋肉の構造がはっきりと見てとれる。
持って生まれたものもありますが、ストイックに何十年間も鍛錬し続けてきた結果です。 


「アルルの女」 草刈民代さんと。


と、本当に華々しいキャリアなのですが、とてもシャイなことで知られており、何の知識も先入観もなく初めて話した時も、あまりの静かさに「あなた本当にイタリア人??」と思いました。


Hope Japan Tour
シルヴィ・ギエム オン・ステージ 2011


10月26日、ギエムが見たくて観に行ったこのステージでマッシモに出会いました。

Aプロの「マノン」 L'Histoire d'amour のベッドルームのパドゥドゥはえも言われぬ美しさ。
あの音楽もずーっと頭を離れなかった。


ギエムと並ぶと二人とも本当にスタイルもよくて見目麗しい。非常に絵になります。
長くのばしたダークヘアーを束ねた des Grieux 役のマッシモ。一生忘れないと思う。
YouTube Manon Bedroom PDD


いつか是非、全幕を観たいものです。
2011年1月にスカラ座でギエムとマッシモはマノンの全幕を踊っています。
YouTubeでベッドルームのPDDと、ラストシーンのPDDだけ見ることができたけれど、本当に感動的でした。
最愛のマノンが死んでしまい、絶叫・号泣する彼は本当に役に入り込んでいて、あの場に居て生で見ることができたらきっと、涙が止まらなかっただろうなーと思います。



先のベッドルームのPDDでも、踊り終わった後二人はキスしています。
初めは不思議に思いましたが、このラストシーンのパドゥドゥを見て、役になりきった結果、彼らはシルヴィとマッシモではなく、マノンとデグリューなんだ。と気づかされました。
そう思えばキスも納得です。


コメントを見ても、
「あの夜は本当に素晴らしくて涙が出た」
「It was a magic evening, the gods must have been smiling like never before as the two stars gave superb, exquisite performances」
「人生で最も美しい夜のひとつ」と大絶賛。
ライブで観た人が本当にうらやましいです。
ここのところあまり踊らないマッシモ。私にはそんな機会、訪れるのでしょうか・・・?


「田園の出来事」 A Month in the Country の家庭教師役でも素敵でした。
淡い水色のブラウスに、縦ストライプのパンツ。
短髪に見えるようにセットを変えて登場です。


先ほどのマノンとは打って変わって明るい舞台で、ギエムもマッシモも、また違った一面を見せてくれます。
マッシモ演じるこのベリヤエフ Aleksei Belyaev 役は21歳のハンサムな学生で、シルヴィ演じる一家の母ナターリヤ Natalya の息子の家庭教師として招かれますが、ナターリヤだけでなく養女のヴェラ Vera も彼と恋に落ちてしまいます。
というちょっとflirtyな役なので、私はさっきの一途にマノンを愛するdes Grieuxのマッシモのほうが好きでした。

Massimo Murruとの出会いについて でした。

2011年11月17日木曜日

お料理教室 ~Cucina Gianni~

Cucina gianni
  - Scuola della cucina e dei vini italiani -

私の通う「クッチーナ・ジャンニ」は、東京タワーのすぐ近くのマンションの一室で学べる少人数制のイタリア料理教室です。

http://www.cucina-gianni.com/

ホームページのリンクを女友達に送るとほぼ100%「シェフ、イケメンだね」と言われますが


シェフの小崎さんは、爽やかなイケメンなだけでなく面白い方です。料理の腕は勿論のこと、教えるのがとても上手でわかりやすい。
はなまるとかにも出ちゃったらしい

コースは基礎、A, B, C, イタリア料理研究家コースなど5種類あります。
詳しくはHPをご覧ください


私が受けているクラス、コルソA(Aコース)では毎回、前菜・パスタ・メイン・デザートの4皿を習い、白赤一種類ずつワインを合わせて皆で味見。そして紅茶を頂きつつゆったりします。


ある日のメニューは私の大好きなヴェネツィア料理でした♬

イワシのヴェネチア風マリネ Sarde in saor
スパゲッティーニ ボンゴレビアンコ Spagettini vongole bianco
魚介のフリットミスト Fritto misto di frutti di mare
ティラミス Tiramisu


まずマリネ液を作ります。
オリーブオイルでスライスしたCipolle タマネギ、Alloro ローリエをゆっくり炒めます。

Pignoli 松の実 Uvetta レーズン Aceto di vino bianco 白ワインビネガー
を加えてとろりと煮詰まってきました❤


Sardine イワシをおろす小崎さんの華麗な手さばきに注目。


塩コショウをし、Farina 小麦粉をはたいて油で揚げます。

揚げたての魚と熱いマリネ液を合わせて冷まし、味をなじませます。


完成! 美味しそう・・・


あとはレシピは省いて写真だけ。
作り方は小崎さんのとこで勉強しましょ~

Spagettini vongole bianco

Fritto misto di frutti di mare

Tiramisu


Buon apetito! いただきまーす❤