2012年12月1日土曜日

北京バレエ鑑賞旅行記(4) ~楽屋裏侵入編~

11月17日(土)  「エチュード」「マルグリットとアルマン」2日目

★スパイ大作戦★

昨夜のうちに早速グレースから「6時に劇場に来て」と指示があった。


ちなみに国家大劇院のセキュリティー管理は厳しく、公演開始の1時間前までは入場できず、セキュリティーチェックも厳しい(空港のセキュリティチェックと同じレベル。水とカメラは持ち込み禁止)。
だから開場30分前の「6時に来い」ということは、もしかすると開場前にシルヴィ(とマッシモ)に会えるかも?!という淡い期待を抱かせる指示である。
5時50分に劇場入り口に着くと、すでにそこには我々を待ち受ける敏腕エディター・グレースの姿が。笑

Stellaを見つけると、てきぱきと今日の行動プランについて話してくれた。
まずシルヴィ(マッシモを忘れないで~)にあなたたちがわざわざ遠くからやってきていて、会いたがっていると告げる。もしも彼女が会うのが無理ということであれば、サインしてほしいものを今あずかって、彼女にサインを頼む。彼女が対応できるのがいつなのか(舞台前か、休憩中か、舞台後か)はまだわからないが確認するー
ということだった。

アメリカ人母娘もすぐに現れ、この計画に賛同の意を表し、グレースの親切心と機敏さを讃えた。もはや単なるバレエファンではなく、共産圏で何か怪しいことを企む危険分子になったような気分である。

アメリカ人母娘からシルヴィサイン用の写真を預かり、場内へと消えていくグレース。いい知らせを持ってきてくれることを祈りつつ、彼女の姿が再び現れるのを待つ。
しかし6時半の開場時間になって人々がセキュリティーゲートに並び始めても彼女は戻ってこない。心配になったStellaは彼女の携帯に電話をかける。

いわく「シルヴィもマッシモもまだ到着していない。10分後にまたかけて」と。確かに、開演は7時半だが彼らの出番は8時半ごろだから、まだ着いていなかったとしても不思議はない。

10分後にかけると、「シルヴィに会って話をした。」そしてなんと「是非あなたたちに会いたいって言ってる」と!!!!アメリカ人母娘、大コーフン。

シルヴィ優し~~~~い

Stellaのお目当てマッシモは、まだ捕まえられてない、とグレース。「マッシモのほうは会ってくれるかわからないけど、きっと会ってくれると思う」とポジティブなグレースの言うことが本当でありますように。じゃっかん不安なStellaだが、とにかくこのけなげなアメリカ人母娘は確実にシルヴィに会えるのだ。良かった!



★昨日よりマシだった「エチュード」★

さてさて昨日はずいぶんとお粗末だった招聘元の中国人ダンサーたち。いくらなんでもそりゃーないでしょ。「Etude & Marguerite and Armand」って一応シルヴィ・マッシモに並ぶんだからさー、恥かしくない程度に踊ってよ!と思っていたら、根性を出したか?反省して猛練習したのかしら。2日目は初日より格段に良くなっていた。まだふらついてる人とかひとりだけ他と音ずれてる人とかいるけど、全体的に昨日より見やすくて安心した。




★昨日よりさらにパーフェクトだった「マルグリットとアルマン」★

マッシモがキテる!!昨日よりさらに熱く、情感がこもって涙をそそります。ああ~見に来てよかった。と涙ぐむStella。

Stellaは今年だけでも、マッシモとエマヌエラ・モンタナリの「マルグリットとアルマン」をミラノで3回、ニーナ・アナニアシヴィリのを東京で1回、あとシルヴィとニコラ・ル・リッシュのをビデオで観ている。ニコラとシルヴィのはシルヴィの演技力がすごくてDVDとは言え泣けるし、実は個人的にエマヌエラ・モンタナリの可憐ではかなげなマルグリットがけっこう好きだった。アルマンの父親が別れを宣告した後の悲壮感の表現が特に好き。

でもテクニック的にはやはりシルヴィにかなうものはないって思ったね。それに、マッシモとの並びがとってもお似合いで美しい




★楽屋裏に侵入!★

もはやマガジン・エディターではなく、シークレット・エージェントと化したグレース。無線片手に、007ばりに指示を飛ばす。

我々をどうやって責任者の目に触れず楽屋裏に入れるか、ベストタイミングを模索しながら奔走してくれた。

しばらくすると、スタッフ入口から顔をのぞかせた彼女から、「Now‼」と鋭いサイン。キャー!!!いよいよよッ!!

いざ、突入ー!


廊下にはシルヴィの着た赤・白・黒のドレスがかかっていた。そして間もなくシルヴィが現れた~~~
ぎゃーーーっ シルヴィ綺麗


舞台見てる時は正直ちょっと年食ったなーとか思っていたのだが、やっぱり近くで見るとすごくにこやかで華奢で笑顔がやさしくて、本当にステキ。

アメリカ人母娘は感動のあまり涙。良かったね、はるばる飛んで来た甲斐あったね。

「じゃあ、またね。」去ろうとしたシルヴィに、あっ!待って。
アメリカ人母娘に遠慮して黙ってたStellaがいっこだけ聞きたかった質問。

「来年の日本公演は、何を踊るの?」

「マッツ・エックの『カルメン』とアクラム・カーンの『Sacred Monster』よ」

マッツ・エックのカルメンということは…
パートナーはまさか!

「だ、誰と…?」

「マッシモ・ムッルと」


マッシモが来年日本に来る…!!

ありがとうシルヴィ様。あなたの住んでるスイスの方角にはもう二度と足を向けて寝ません。


★そしてマッシモ★

さて、シルヴィは去って行ってしまって、アメリカ人母娘は興奮冷めやらず、Stellaも来年マッシモが日本に来るとわかり感激だけど、マッシモにはやっぱり会えないのか…しゅん。

っと思ったら間髪入れずグレース「じゃ、次マッシモ」とStellaの背後にあるドアをノック。気づかなかったけど、なんとその楽屋には Massimo Murru の文字が‼
空いたドアからカバンや荷物がチラリと見える。

ぎゃーーーっっ

控え室から出てきたホンモノのマッシモ!を目の当たりにしたら、毎度のことながら頭真っ白。

日本に来ると聞いて嬉しいです!楽しみにしてます…
っていう事だけは伝えられたけど。
ああっもう!なぜこうもうまくいかぬ・・・

アメリカ人ママ、哀れに思ったか助け舟出してくれたりして。そもそもさっきからStellaのコート持ちまでしていただいてるし、ホントすんません。



★生き延びたプレゼント★

マッシモに渡そうと日本から持って行ったお土産は無事マッシモの手に渡った。実はこの土産、何度か開封・没収の危機を生き延びてここまで来た。

先述の通り、北京市内のセキュリティチェックは異常に厳しく、いちいち地下鉄に乗る度荷物をスキャンされるし、博物館とか劇場とかに入るときに持って入れるものが制限される。
例えばペットボトルの水を持って万里の長城行き電車に乗ろうとすると、中の液体が怪しい何かでないことを証明するために、「飲め」と言われる。最初、飛行機に乗る時と同じで全部その場で飲むか捨てろという意味かと思って飲み干そうとしたら、一口飲んだところで相手の注意は次の人へと移ったので、なーんだそういう事?(注:Stellaと北京市民は共通言語を持たない)と理解した。但し劇場へはただの水であっても持ち込めない。

マッシモへの土産はいちいちスキャンに引っかかった。この日昼間行った中国国立博物館でも然り。
お前、危険物を持ってるな?と言われているのか、鋭利なものを持ってるだろう、と言われているのか全くわからないが、とにかくStellaの土産は彼らのセキュリティ基準に引っかかるらしい。
カバンから取り出して怪訝な面持ちで包みをひっくり返してみたり、開けたそうにしている。
そうはさせるか!マッシモへのプレゼントなんだぞー!と必死のStella。どう見たって贈り物の包装よ、それ。わざわざ日本から運んで来たのよ。開けないでぇぇ

此贈物
我不可開 
←必死。
とか漢字を羅列し筆談で訴えようとするStella。それを見て相手も筆談で応戦してくるが、相手の中国語はホンモノ(当たり前だ)のため、意味がわからない。
お互いの言葉が通じず、困惑してプレゼントを睨む集団。
別にこれ、持って入りたい訳じゃないから、なんならここに預けてもいいから、お願い!開けるのはよしてー…

結局、英語の話せるスタッフに電話でつないでもらう。「あなたはガラス製のものを持っていますか」うん。でも、何でガラスがいけないの??
 「それは外のクロークに預けて下さい」 お安い御用よ、さっきからそれを提案してたのよ!
てなわけで一件落着、マッシモへの土産は危機を脱したのだった。




★「マルグリットとアルマン」舞台裏★

楽屋侵入ついでに舞台にも行ってみた。
じゃじゃん!
「マルグリットとアルマン」舞台装置片付け中。これからこのセットたちは何処へ帰るのかしら。Stellaが東京やミラノで今年何回も見たのも、このセットだったのかな。






★「マルグリットとアルマン」舞台裏侵入大作戦 総括★

そんなわけでStellaの舞台裏侵入・スパイ大作戦は成功裏に終わった。
行きたくもなかった北京まで飛んでった甲斐あって、マッシモにも会えたし、無事プレゼントも渡すことができた。

結論。
持つべきものは協力者、語学力と行動力である。あと、ひたむきに諦めないことも。

グレース、アメリカからわざわざ飛んできた愛すべきシルヴィ・ファンのマリヤとお母様。
チケット取ってくれたNくん、本当にありがとう。

fin.

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