マッシモ・ムッルがアルブレヒト役を務めたエック版「ジゼル」のスカラ座初演は、第2幕で見せるアルブレヒトのヌードが話題となりました。
短いインタビューですがマッシモの率直な気持ちが語られています。
楽しい内容ではないですし、彼の心情を察すると悲しくなりました。
バレエにおける表現の自由や色んな形の芸術性に対する、イタリアのメディアや人々の狭量さと浅はかさに失望し、憤りさえ感じていたのではないかと思います。
Roberto Bolle in Ek's Giselle |
のちに(Intervista esclusiva a Massimo Murruでご紹介しましたが)同じスカラのエトワールであるロベルト・ボッレがこの「ジゼル」を踊った時も、同じようにヌードが話題となり、12年経っても変わらぬ世間に対しマッシモは二度目の失望を味わうことになります。
マッシモはこの作品を「素晴らしい作品」と評しているだけに、こういった世間の取り上げ方はつらかったでしょうね。
【記事本文】
ムッル「遺憾です、何年もバレエを学んできたのに、ひとつの"スキャンダル"で有名になるなんて」。
「愕然としています。このタイトルは全く意味が分からない。僕は人生を通してバーにつきダンスを学んできたのに、突如として僅か数分のヌードのせいで皆が僕を話題にしている。全く予期していなかったし、少々残念でもある」。
スカラ座の若きエトワール、マッシモ・ムッルは驚愕する。マッツ・エック版「ジゼル」での彼の一糸纏わぬ姿がイタリア中のテレビや紙面を騒がせた。
サルデーニャ地方にオリジンを持つミラノ生まれの26歳は、1994年に"その場で"プリンシパルダンサーに昇進した(マクミラン版「マノン」でのたった一度の芸術的価値の高いパフォーマンスにより、当時芸術監督だったエリザベッタ・テラブストの元で決まった、非常に稀な昇進である。)
ムッルはスカラ座ダンス学校を8年で修了し、1990年に同バレエ団に入団。
「マッツ・エックの『ジゼル』は素晴らしい作品なのに、人々がスペクタクル自体より僕のヌードを話題にするのは残念だ。しかもスカラ座ではこうしたことは初めてではありませんし。
バレエ団全体の出来は良く、フォンタナ監督もそう言って手紙を送って来ました」。
ムッルは今後転換期を迎えるかもしれない。
「今シーズンは『ジゼル』の後にローラン・プティの『ノートルダム・ド・パリ』初演も控えており、アレッサンドラ・フェリを相手にカジモド役を踊ります。本来なら昨年パリ・オペラ座で踊っているはずでしたが、足を痛めていました。
スカラ座では(同作品を踊るまで)さらに一年時間がかかった。自分が十分に使われていないと思うし、バレエの上演もあまり多くない。もしスカラ座劇場の幹部がバレエ団に投資をし、新たな作品の投入と上演回数を増やす気がないのなら、僕はここを去って他で踊ります。他の興味深い作品を提案してくれる振付家を探します」。
【訳者補足】
エック版「ジゼル」は1982年スウェーデンのCullberg Ballet(同バレエ団はエックの母により創立され、エック自身も85~93年まで劇団のマネジャーだった)で初演。
アドルフ・アダンの曲を一音も変えることなく、突拍子もない衝撃的な設定でまったく新しい解釈をしています。
エック版「ジゼル」あらすじ
クラシック版「ジゼル」のストーリーは有名なので省きますが、エック版はドイツの田舎の風光明媚な村ではなく、どこか遠いトロピカルな島を舞台に展開します。
ジゼルは空想がちで一人ぼっちの女の子。人には見えないものが見えたり、聞こえたりするため、ジゼルに恋するヒラリオンは、家畜にするように彼女に縄をかけて束縛したりします。
村人たちは貧しい労働者で、村に貴族がやってきた時も、歓迎や踊る喜びからダンスをするのではなく、お金を稼ぐために踊ります。
ジゼルは真実の愛を見つけ、子供をもうけることを夢見る少女。
そこへお金持ちのアルブレヒトが現れ、田舎を捨てて豊かな暮らしがしたいジゼルはすぐさま彼を誘惑する。
アルブレヒトは自分の生きる世界を捨てきれない愚かな自己愛者で、ジゼルは自分の夢を体現したかのような恋人・アルブレヒトの裏切りを知った時、悲しさのあまり気が狂ってしまい、精神病院へと送られる。
そこへお金持ちのアルブレヒトが現れ、田舎を捨てて豊かな暮らしがしたいジゼルはすぐさま彼を誘惑する。
アルブレヒトは自分の生きる世界を捨てきれない愚かな自己愛者で、ジゼルは自分の夢を体現したかのような恋人・アルブレヒトの裏切りを知った時、悲しさのあまり気が狂ってしまい、精神病院へと送られる。
(クラシック版のように、命を落としはしない)。
Roberto Bolle in Giselle of Mats Ek |
第2幕の精神病院。舞台のセットは、体の部分が切り取られた不気味な室内の様子。ここにはジゼルのように不幸な女性たちが収容されており、人生を、愛を、母性を取り返したいと願っている。
ジゼルは愛する男に裏切られた悲劇のヒロインに浸っているため、ヒラリオンからの助けも、アルブレヒトからの助けも、拒否してしまう・・・
といった流れです。
また機会があればもう少し掘り下げて学んでみようかなっと思いますが、今日はここで。
【参考】
http://archiviostorico.corriere.it/1999/ottobre/21/Giselle_Mats_Spettacolo_coinvolgente_con_co_7_9910214528.shtml
http://www.culturekiosque.com/dance/reviews/mats_ek.html
http://en.wikipedia.org/wiki/Mats_Ek
http://en.wikipedia.org/wiki/Cullberg_Ballet
【原文】
http://archiviostorico.corriere.it/1997/dicembre/20/danzatore_peccato_studiato_anni_divento_co_0_97122012875.shtml
Il danzatore: peccato, ho studiato anni ma divento famoso con uno " scandalo "
----------------------------------------------------------------- L'INTERVISTA Il danzatore: peccato, ho studiato anni ma divento famoso con uno "scandalo"
"Sono esterrefatto. Non capisco tutto questo scalpore: ho passato la mia vita alla sbarra per studiare danza e ora, di colpo, tutti parlano di me per qualche minuto di nudo. Non me l'aspettavo e un po' mi dispiace".
E' stordito Massimo Murru, il giovane primo ballerino della Scala la cui immagine senza veli nella rivoluzionaria "Giselle" di Mats Ek ha bombardato l'Italia in televisione e sulla stampa. Ventisei anni, milanese d'origine sarda, e' stato nominato "sul campo" primo ballerino nel 1994 (una rarissima promozione che si ottiene solo grazie a una prestazione artistica di alto valore) dall'ex direttrice del ballo Elisabetta Terabust, al termine di una eccellente "Manon" di MacMillan.
Ex allievo della Scuola di Ballo, frequentata per otto anni, Murru e' entrato a far parte del corpo di ballo nel 1990. "La "Giselle" di Mats Ek - continua - e' un grande balletto e mi rincresce che si parli piu' del mio nudo che dello spettacolo. Oltretutto questa non e' neanche la prima volta che capita alla Scala.
Tutta la compagnia ha danzato bene: anche il sovrintendente Fontana l'ha riconosciuto in una lettera che ci
ha inviato". Nel suo futuro potrebbe esserci presto una svolta: "In questa stagione dopo "Giselle", avro' un altro debutto nel "Notre - Dame de Paris" di Roland Petit, in cui saro' il gobbo Quasimodo in coppia con Alessandra Ferri: dovevo gia' danzarlo l'anno scorso all'Opera di Parigi, ma mi feci male a un piede.
Alla Scala pero' mi do ancora un anno di tempo: penso di essere sottoutilizzato e le recite non sono molte. Se su questa compagnia la direzione del teatro non investira' abbastanza con nuove creazioni e con piu' spettacoli, me ne andro' a ballare all'estero. Cerchero' altri coreografi che mi propongano altri balletti interessanti". (v. cr.)
Crippa Valeria
Pagina 37
(20 dicembre 1997) - Corriere della Sera
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