2012年4月9日月曜日

ホールバーグ移籍 最初の数日間

さてこの度ご紹介の記事はまたまたデイヴィッド・ホールバーグのボリショイ移籍に関してです。
前回ご紹介の記事は、ホールバーグの母親や恩師からの語りも混じって、ホールバーグの軌跡をたどったものでした。

今回は彼がいかにして最初のボリショイでの日々を過ごし、周りに受け入れられたかのおはなし。讚辞と批判まじりに。


★ロサンゼルス・タイムズ紙より★

Los Angeles Times 2011/11/19
http://articles.latimes.com/2011/nov/19/entertainment/et-russia-hallberg-20111119

ABTプリンシパルであり、今はボリショイのプレミアダンサーであるデイヴィッド・ホールバーグは、ボリショイのロシア人プリマバレリーナ、スヴェトラーナ・ザハロワと、観客席を埋め尽くす1750人以上からスタンディング・オベーションを受けていた。その中にはメドベージェフ大統領もいたが、少なくとも1人以上の同僚ダンサーは、快く思っていなかったはずだ。


「眠りの森の美女」舞台裏。中央はメドベージェフ大統領。

ホールバーグとザハロワはデジレ王子とオーロラ姫としてチャイコフスキーの音楽に乗ってエレガントに踊る。イタリアンデザイナー、フランカ・スカルチァピーノの豪奢な衣装、舞台芸術監督エズィア・フリゲリオによる絢爛な舞台など全てがユーリ・グリゴローヴィチ監督の元に一体となる。

デイヴィッド・ホールバーグ(29才)は、11月4日に「ジゼル」でナターリア・オシポワとボリショイのセカンドステージを飾ったが、約1ヶ月で新カンパニーと新しい国に適応しなければならなかった。

今週、彼はモスクワの生活への順応について語ってくれた。

Metropolホテルから、ダウンタウンにあるTverskaya通りのアパートへと移り、モスクワの街を体感するのは毎朝、エンドレスなレッスン、リハーサル、舞台の続くボリショイ劇場へと行き来するその道すがらだ。

「最初はモスクワに少し圧倒されていたんだ」。
ボリショイ劇場脇の建物内にある小さなカフェでホールバーグは語った。
「でもこのボリショイ劇場があるから、僕の職業はバレエダンサーだから、そして僕はこの仕事に全てを捧げているからこそ、それが僕に基盤を与えてくれる。その成長の基盤があるからこそ、自分のペースやエネルギーや日常のリズムを定義することができるのです」。

「眠りの森の美女」が終わったら、ロシア語のレッスンを始めるつもりだ。
したし彼のスケジュールはハードである。二回目の「眠り」は世界中の映画館で生中継される。11月の終わりには、「ドン・キホーテ」のバジル役で登場する予定だし、他にもボリショイで「The Bright Stream」に出演が決定している。
12月初旬にはNYに戻り、ABTのラトマンスキー版「くるみ割り人形」に出なくてはならない。

「今の僕には『眠り』が最も重要だけど、これが終わったらセルゲイ・フィーリン監督と、僕がモスクワに居られる時間を最大限に有効に使えるように相談することになっている」。
大スターみたいに、やって来て皆にあれこれ指示する人間にはなりたくない、とホールバーグ。
「そういうことをしたり、振り付けを始めたりする前にまずは真にボリショイの一員にならなくてはね」
とクスクス笑いながら付け加える。


ボリショイ劇場前で。かわいい笑顔ですね。
この物静かなアメリカ人は、パートナーのザハロワがドレスリハーサルの間、舞台での写真撮影を全て終え、またオーケストラを止めて速く演奏させたり遅くさせたり、照明に文句を言ったりしながら、英語で何が起きているかホールバーグに説明するのを辛抱強く待った。

・・・お気の毒に。

最終的に、ザハロワ自身がオープニングの夜のパートナーをホールバーグに決めたという。
セルゲイ・フィーリンとグリゴローヴィチはザハロワに6人の中からパートナーを選ぶ権利を与えた。
「彼女が自分で自分の王子を選ぶというわけです」とフィーリン。「ザハロワはリストを見て、"どのパートナーでも私はハッピーだけれど、出来ればデイヴィッド・ホールバーグと踊りたい"と言いました。これでパートナー選びの問題は解決しました」。

さすが女王様。4人どころか6人の王子から選べだなんて。

一方ホールバーグはザハロワを非常に高く買っている。彼女は舞台の上でも外でもとても協力的だそう。
「スヴェトラーナは素晴らしくてこれ以上何も求めることが出来ないくらい。彼女はボリショイのle grande dameであり、世界のプリマバレリーナ。僕は彼女のパートナーを務められることを彼女に証明して見せなければならないのです」


このちょっと「どや顔」気味な笑顔がStellaはけっこう好き。

全体的にホールバーグはボリショイに来てから常に快適に感じており、一度としてしっかりケアーされていないと感じたことは無いという。

「これは明らかに、僕にとってだけでなく新生ボリショイにとっても非常に重要なターニングポイント。『眠りの森の美女』は劇場再オープンのこの歴史的な大舞台での最初のプロダクションであり、ボリショイはアメリカ人に主役を任せることでバレエ団のグローバル化を図っていることを示している」。

しかしこのコメントが彼の同僚の間で物議を醸し始めている。
「僕はデイヴィッドが好きだしダンサーとして尊敬もしているけれど、あの発言はロシアン・バレエ全体に対する侮辱であり、豊かなロシアの伝統と文化への無関心の表れだ」
とインタビューに答えたのはプルミエ・ダンサーのニコライ・ツィスカリーゼ(18日)。
「国家はバレエ学校のサポートに莫大な投資をしながら、一方で外国人を、アメリカ人を雇い、全ての優れたロシア人ダンサーを差し置いて歴史的な舞台のシーズンを幕開けたのです」。

同バレエ団のプルミエ・ダンサーとして長いツィスカリーゼが舞台に登場するのは、4日目の11月23日だ。
「バレエ団の経営陣はホールバーグを雇うことである態度を示しており、他のことも鑑みて、ロシア人ダンサーにボリショイでの未来は無い」
ツィスカリーゼの苦言は、今週始めに同団を揺るがしたニュース、イワン・ワシーリエフとオシポワのスターカップルのミハイロフスキーへの移籍と、エコーを醸す。

ミハイロフスキーに移籍した、オシポワとワシーリエフ
先日イワン・ワシーリエフはロシアのTV、First Channelで「前に進み、自分を伸ばし、とにかく全く新しいことにトライしたい時が訪れたのです」と話した。
ジェネラル・ディレクターのAnatoly Iksanovは「考えられない高い条件で最高のダンサー達を誘惑する、ボリショイへの攻撃」と呼ぶ。

ホールバーグはと言うと、何か違うものを探す友人や同僚の気持ちも分かる、と言う。
「彼らはボリショイにとって輝くエネルギーであり、紛れもない大スターです。
だけどアーティストなら誰しも、自分なりのチャレンジ、自分のための環境、新たな発見を求めるものです。だから彼らがミハイロフスキーでたくさんの新たな機会に恵まれるのだとしたら、僕は彼らを祝福します。
それは僕自身がボリショイへの移籍で求めたことです。人々に何故アメリカを去るのかとか、アメリカでは見つけられないなにかのためなのかとか、逃亡したいのかと尋ねられながら。
僕は逃げるのではありません。翼を広げ、新たなチャンスを探しているのです」。




最後にStellaから感想を一言言わせてもらうと、ホールバーグのこの先がちょっと心配…。
もっと謙虚にしてないといぢめられちゃうよー?
自己アピールしてなんぼのアメリカにいる時と同じ態度では正直厳しいのでは。やっぱりロシア人の立場から見ると、ツィスカリーゼと同じ感じ方の人が多いんではないかなーと思う。いくらグリゴローヴィチとフィーリンとザハロワのお気に入りでも、同僚とうまく行かなきゃ辛いだろう。
Stellaはホールバーグ好きだから、彼の幸運を祈る。頑張れ~!

fin.

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